加圧トレーニングとは?

 

腕・脚の付け根に専用のベルトを巻き、適正な圧力を加えて血流量を制限しながら行うトレーニング方法で、筋力アップやシェイプアップなどの運動効果を短期間に短時間、低強度の運動で得られます。

加える圧の強さやメニューをお客様それぞれに合わせることで、競技力を向上させたいアスリートの方、運動習慣が無かったり運動が苦手な方、体力の衰えを感じるご高齢の方、病気で通常のトレーニングが難しい方など、幅広い対象者の目的や体力に合わせたトレーニングが可能です。

近年では、アメリカやヨーロッパなど海外にも普及し始めています。

身体を錯覚させる

専用のベルトを巻いて適切に血流を制限すると、ベルトから先の部分は血液が貯まり筋肉もパンパンに張った状態になります。

これはハードな運動をしている時と同様の状態です。

すると身体はハードな運動をしていると錯覚し、ハードな運動をしている時のような反応を起こすため、実際にトレーニングで使用する負荷は軽くても筋力アップが可能になります。

また、使用する負荷が軽くなることで身体(特に関節や骨)への負担も軽くなります。 

低強度の運動で筋肥大する

下の図は、ダンベルカールのような肘を曲げて上腕二頭筋(力こぶ部分)を鍛えるトレーニングをした時の、加圧トレーニングと通常のトレーニングの筋肥大の仕方を上腕を輪切りにして比較したものです。

加圧トレーニングと通常のトレーニングの筋肥大の仕方の比較

一番右のトレーニング前の図を見て頂けると分かりやすいかと思いますが、中心が骨、上部分が上腕二頭筋、下部分が上腕三頭筋(二の腕部分)を表しています。

 

①の低強度(最大筋力の50%)では二頭筋は5%肥大したものの、三頭筋に変化はありませんでした。

②の高強度(最大筋力の80%)では二頭筋が15%、三頭筋が5%肥大しました。

一方、③の加圧トレーニングで最大筋力の50%のトレーニングをすると、二頭筋が20%、三頭筋が13%肥大しました。

 

低強度の加圧トレーニングが通常の高強度のトレーニング以上の、トレーニングをした筋肉としていない筋肉両方の筋肥大が起こるという結果が出ました。

 

筋肉が肥大するには、通常は最大筋力の70%以上の負荷が必要とされますが、加圧トレーニングではベルトを巻いた状態で歩いたり、立ったり腰掛けたりという日常動作を行うぐらいの、最大筋力の20%程度の負荷でも筋肥大が起こります。


◇加圧トレーニングの特徴◇

成長ホルモン、乳酸の分泌量が多い

成長ホルモンは脳下垂体前葉から分泌される、身体の成長と新陳代謝に関与する方ホルモンです。

老化を遅らせたり、肌のはりやつやを増加させる美容に関する作用から、「若返りホルモン」とも呼ばれています。

 

 

成長ホルモンの役割、作用

・筋肉の成長、タンパク質の合成の促進

・骨密度の上昇、身長を伸ばす

・脂肪燃焼の促進

・免疫機能の強化

・運動能力の向上

・皮膚弾力の増加、肌の再生

・ケガや手術からのリハビリ期間の短縮

 

分泌量は成長期を過ぎると徐々に減っていき、40歳代ではピーク時の約50%まで低下します。

しかし加圧トレーニングであれば年齢に関係なく、成長ホルモンをしっかり分泌させることができます。

 

 

 

また、もう一つの乳酸には成長ホルモンの分泌を促す作用があります。

以前は疲労物質と考えられていましたがそうではなく、筋肉を動かすエネルギー源を作る際にできる物質です。

 

下の図は加圧トレーニングと通常のトレーニングをした時の成長ホルモンと乳酸の分泌量を比較したものです。

 

成長ホルモンと乳酸の分泌量

加圧トレーニングをすると筋肉内に乳酸が分泌され、貯まった乳酸の作用によって大量の成長ホルモンも分泌されます。トレーニングを開始して15分後くらいに成長ホルモンの分泌がピークになり、その後1~2日ほどかけて緩やかに低下していきます。

加圧トレーニングでは、成長ホルモンが安静時の約290倍、通常のトレーニングの最大約4倍、そして乳酸は通常のトレーニングの最大約2倍分泌します。

成長ホルモンと乳酸の分泌量が多いため、筋力アップなどの運動効果を通常のトレーニングよりも短期間、短時間で得られます。


速筋、遅筋2タイプの筋肉を同時に鍛えられる

筋肉には瞬発的な動きや大きな力を必要とする時に働く速筋と、体内の酸素を使い持久的な動きで働く遅筋の2タイプがあります。

通常、速筋は高負荷、遅筋は長時間という別々のトレーニングが必要になります。

ところが加圧トレーニングでは、両タイプを同時に鍛えることができます。

 

加圧トレーニングの初めのうちは遅筋が活動しますが、血流を制限しているため遅筋が活動するのに必要な酸素が早い段階で足りなくなり、遅筋だけでは対応できず速筋の活動も始まります。

このため、通常のトレーニングでは不可能な遅筋と速筋を同時に鍛えることができ、時間と労力の短縮にも繋がります。


血行が良くなる

下の図は血液の流れを表したものです。

血液の流れ

青の四角で囲っている末梢抵抗とは血液の流れにくさの事で、数字が小さいほど血液は流れやすくなります。

加圧トレーニング中は血流を制限しますので、血液は流れにくくなり末梢抵抗も1.7まで上がります。

すると脳は危険を感じ、血管を拡張して血液が流れやすくなるよう指示を出します。

そして血液の流れを制限していたベルトを外すと、末梢抵抗は加圧前よりも小さい0.6まで下がります。

 

加圧前よりも血液が流れやすくなったことで、これまで使われていなかった毛細血管など身体のすむずみにまで血液が行き渡り、血圧も下がっていきます。

この結果、血流の悪さが原因のタイプの冷え性や肩こりなどの不調が改善しやすくなります。

また、血管の弾力が増すことで動脈硬化の予防・改善にもつながります。


回復力が上がる

・成長ホルモンの傷ついた細胞を修復する作用により、ケガの回復が早まります。

・加圧トレーニングで新陳代謝が促されることで、捻挫などでの腫れが引きやすくなります。

・加圧のベルトを巻きながら寝ていても、立って運動をしている時と同様に心臓や血管を鍛える効果があり、狭心症や心筋梗塞の治療にも使われています。

・弱くなっている部分の骨の強度を集中的に強化する効果があります。


認知症、うつ病の予防・改善

成長ホルモンには情緒が安定する、活力が増してくるといった精神的な作用もあります。

また、脳の機能低下は脳への血流量が減る事が一つの要因とされています。

 加圧トレーニングで多く分泌する成長ホルモンと血流量の増加が認知症、うつ病の予防や症状の改善に期待できます。

参考資料 加圧トレーニングの理論と実践